あかやあかしやあやかしの * 好きだから食べたい食べたくない

 

~あかやあかしやあやかしの~

制作:HaccaWorks*
ジャンル:和風ファンタジーADV、ホラー(風味)
クリア時間:30時間前後

 

年末年始、ぼーっとしながらできるやつがやりたくて積んでいたノベルゲームを引っ張り出しました。これ、本当はPSP時代の時から気になっていて、手を出すギリギリで出さずにいたのでした。

なんとなく世界観は気になりつつも、ノベルゲームってわりと時間を取られるからなあ、とか考えていたらいつの間にか10年以上が経っていたという…時の流れって速いよね!!switchでセールの時に買っておいて、さらに一年寝かせてのようやくプレイでした。寝かせすぎだ。

 

ストーリーの決定的なネタバレは記事後半

 

 

あやかしと人間が共生している「空環(うつわ)」という町で、あやかしに育てられた狐面の少年「由(ゆえ)」は初めてヒトビト(人間)の世界に降りてきた。お祭で出会った人間の子「椿」と「秋良」の友達になるために。

けれど、ふたりと仲良くなるほどに、由は葛藤する。なぜなら彼の目的は、ふたりのうちのどちらかを"食べる"ことだったから。

 

キャラを攻略するマルチエンディングのノベルゲームというと大抵は恋愛ものですけれど、これは恋愛ではなく友情ものです。雰囲気的にはけっこうホラー風味なのですが、怖さは全然ありません。

和風ファンタジーで人間と妖の交流もの、と言えば「夏目友人帳」とか好きな人にはオススメ…できません。あんなほっこりストーリーではありません。

何故なら、この作品の最も大きな特徴として、複数あるエンディングはどれも何かしら悲しく、すべてのルートがバッドエンドとも言える内容でして、すっきり明るい終わり方を期待すると大ダメージは必至なのです。

 

しかし悲しい展開の中でもキャラクターたちは必死に自分の意志で、進む道を決めようとしていて、結末は幸せではなくとも決して露悪的なストーリーではありませんでしたから、わたしとしては思ったほど辛くはなかったかな。

妖怪側に属する主人公の目線から、ほとんど地の文無しのセリフのみで進んでいくため、世界観を掴むまでに少し苦労はしましたが、入り込んでしまえば魅力的なキャラクターばかりで、掛け合いがとにかく楽しかったです。それだけに、この子たちが誰も傷つかない、みんな幸せなエンドを望んでしまうけれど、あやかしと人の対立構造はそう甘くはないようです。

毎ルート悲しいのですが、しかしひとつひとつ明かされていく真実は衝撃的で、あっという間にすべてのエンドを回収してしまいました。まったく、こんなに面白いのならさっさとやれば良かったです。なんで十数年も寝かせていたのだ…。

 

和風ファンタジーの世界観も良くて、特に音楽がとても気に入っています。作品タイトルでもあり、メインテーマ曲の童謡のような歌は、物語に絡めて作中何度も出てくるのですが、意味深な歌詞と不思議な曲調が魅力的で、作品を見事に彩っていました。

あと、声優さんがびっくりするほど豪華です。メインキャラだけでなく、サブキャラまで徹底的に有名どころで固めてあるのが壮観でした。

 

以下ネタバレ感想!

 

 

 

 

 

 

*メインキャラ
 

由(CV:立花慎之介)

 

どのルートでもだいたい可哀そうなことになる、あまりにも気の毒な主人公。この子自身は何も悪くないのに、いきなり「人間を食べろ」と命じられるんですよ。しかも相手と仲良くなって、一番好きで大事な相手を選べ…拷問か?

最初はわけも分からず、言われた通りに2人と仲良くなりに行きますが、だんだんと「相手を食べなくてはいけない」というのがどういうことかを理解して、苦しむ姿が本当に可哀そうです。食べなければどんどん身体は弱っていき、あやかし達には依り代のくせに使命も果たせないのかと責められ、人間(主に秋良)には「人を食べる化け物め」と責められ…って、どうすりゃ良いんだよ!

終盤は毎回、飢えてヨロヨロの状態になってしまいます。ああ…。しかし、どんな状況でもその時の最善は何かを考え、自分に出来ることをやろうとしていた頑張り屋な主人公でした。言動の幼さはずっと神社に閉じ込められて育ったから、世間知らずな故かと思ったら、そもそも実年齢7歳だったという…。そんな幼児が直面する問題にしては、どのルートもあまりに過酷だよ。

 

椿灯吾(CV:水島大宙)

 

みんな大好きモテモテお兄ちゃん。彼が幼い妹(灯奈)とじゃれてる時に由くんは「つばきが笑った。かわいい」って、かわいいのそっち!?妹じゃなく??ってなったけど、でもつばきかわいいよね、分かる。

みんなのお兄ちゃん!とか思ってたら本当に由くんの異父お兄ちゃんだった。え、え~!!この辺の話はご両親たちの真相が明かされるほどに胸糞悪くて(夜市以外)勝手な奴らだな、とか思いながら見ていました。

最後は兄弟仲良く一緒に暮ら…しません。どう転んでもどちらかが居なくなってしまう。あぁ~…。

 

遠近秋良(CV:櫻井孝宏)

 

最初からずっと由のことを怪しみ、疑いまくり、例にもれず椿お兄ちゃん大好き、な花粉症マスクメガネくん。ルートに入っても矢印はずっと椿へ向いている!こっち見てヨ!!

一応、彼なりに内心は由くんを信じたい気持ちで揺れ動いていたのだろう…とは思うけれど、結局は嵯峨野さんと組んであやかし殲滅ルートへ!ひえ!

でもあやかしによる空環の町の「生け簀」扱いは言い訳のしようもないほどに、普通にかなり酷いからね。それを解放しようという秋良くんが間違っているわけが無いのです。ただ、由くんは…何も知らずに無理やり犠牲にされてそんな立場になってるだけだから…もっと優しくしてあげて…。とか、思いながら見ていたんだけど、でも彼は正しいことをしているはずなのに、由の事が引っ掛かって、「人間ならこっちに来ればいいのに、なんでそっちなんだよ!」って気持ちで苦しんでいたのかと思うと切ないわ。普段のアホっぽいところも含め、この子も魅力的なキャラでした。

 

嵯峨野(CV:鳥海浩輔)

 

最初は何だこの危ないヤンキーは…とか思ってましたが、物語の全貌が明らかになってみると…まあ、お怒りごもっともとしか言いようがない。由くんの不憫さは言うまでもないけれど、この人はもしかしたらそれ以上かもしれないよ。

あやかしに食料として攫われるわ、町を解放しようと戦ったら返り討ちにされて何百年も閉じ込められるわ、身体はシンに奪われて恋人まで取られるわ…。何もかも奪いつくされて、自分の身体を使ってできた子孫たちまで未だにしゃぶられ続けているのだから、あやかしに気に入られるって怖いですねえ…。

そして何の責任も無いはずの由くんが、何故かあやかし達のやった事の罪滅ぼしに自分の身体をあげちゃうのだから、なんという結末か…。自分にべったりのミコ様を冷たい目で見降ろし、あのススキ野原で「由帰って来ないかなあ」って歌をうたうエンドは、あまりに悲しく、しかし映画のように濃厚な余韻でした。

 

黒狐(CV:真堂圭)

 

由の肩でたこ焼きうまうましてたり、可愛い兄貴分のキツネさん。しかし、ずっと「あやかしが人間を食べる」という話を見てきたのに、なぜか黒狐の「食事」についてはまったく考えが及んでいませんでした。でも、言われてみればそうだよな…という真相でして、黒狐にとって大好きで大事で特別な人間ってそりゃあ、に決まっていますよね。ずっと食べたかったのか…そうか。

しかもこのルート「由が望んで、黒狐に食べてもらう」というのが正規エンド扱いというのが、なんとも…いたたまれないのだけど、展開を見ているとそれが一番選ぶべき道に思えてくるから不思議です。

ふたりで逃げてしまうエンドもありましたが、どう考えたって長くは続かないですよね。食事しなければ由は飢えてどんどん衰弱していくのでしょうし、最後の瞬間にはやはり黒狐の口に入る未来しか思い浮かびません。

 

*サブキャラ

 

ミコト(CV:沢城みゆき)

 

最初はその可愛らしい容姿もあって気に入っていましたが、朱史との経緯を知ってしまうと、ちょっとね…。完全にミコ様の一方的な片思いであって、当の朱史には迷惑どころの騒ぎではなく、結果的にこの子のせいで彼は何もかも失ったわけですから、そりゃあ殺しに来るよ??

朱史と同じ顔をした由に同じように手を惹かれ、感慨に浸っていましたから、どんな甘酸っぱい思い出があるのかしらと思ったら…いやあ、とんでもなかったわ。

由がシンの代わりになって身体を朱史にあげてしまうエンドでは、「アカシ、アカシ」と無邪気に喜ぶ姿に、黒狐さえもドン引きする有り様でした…。

 

シン(CV:鳥海浩輔)

 

弱い者が生きやすい世界を望み、由の事もよく気遣っている優しいあやかし…なのですが、はっきり言ってすべての元凶がコイツである。

あくまであやかし目線での「生きやすい世界」なので、人間の扱いは酷いものだが、そりゃ別種の生き物なのだから、ただの餌としか見ないのは当然なのかもしれない。人間の女性を好きになって椿家の血脈を作るけれど、つまり朱史の人生の乗っ取りですから、やっぱり酷い。そしてその朱史の血脈たちは三ッ星とか呼ばれてごちそう扱いですし。ひどい。

弱いあやかしでも生きやすい世界にしたいな ←分かる

そうだ!人間を町ごと閉じ込めて生け簀にしよう! ←ふぁ!?

自分の魂を依り代に入れて人間同士を食い合わせよう ←鬼か!?

灯奈(CV:ゆかな)
 
椿お兄ちゃんの大事な妹。ですが、異母どころか血は全く繋がっていなくて、そもそも人間ですらなかった。その正体はなんとミコ様のしっぽ!!
ミコ様が椿の子を守るために遣わした分身みたいなものだったようですが、わたしとしては、本来なら由が居るはずだった場所を奪ったようにも思える。だって本当の兄弟は由くんなのに…。居場所を奪って成り代わるというのは朱史がされたことと同じなのではないか?…とも思うけれど、この子自身は純粋に椿を守ろうと必死で、やっぱり憎めないですね。
 
嵐昼(CV:鈴村健一)

 

たまに言う「ちゅー」がかわいいよね。「ランチュウ」という名前から連想するのはどちらかといえば金魚なのですが、でもたぶんネズミのあやかしかな。

黒狐とは典型的な「喧嘩するほど仲が良い」的な関係で、黒狐ルートではちょこちょこ出てきては協力してくれたり、由を気遣ってくれたりでホロリときます。

黒狐が死亡し、由だけ神社に帰るエンドでは、傷心の由くんと一緒にご飯を食べてくれるけれど、「嵐昼以外と会いたくない」とか言っているあたり、他のあやかしへの態度が想像させられる。

 

兎たち(CV:眞白・小野友樹 架月・江口拓也)

 

ウサギさんのイメージに反して戦闘派のふたり組。見せ場が少ないのが本当に惜しいです。武器の(!?)を持って、悪食を切り裂く姿が様になっていますし、声優さんの掛け合いも面白く、良いキャラでした。

由の事はあくまでシンのための入れ物という認識で、ルートによっては厄介な敵になってしまうのだけど、黒狐を始末してしまうエンドでは「自分たちには会いたくないだろう」と気を使いつつ、由を心配していて、やっぱりそれなりに愛情は持っていたようだ。

 

金魚たち(CV:玉露・長妻樹里 水仙・三宅麻理恵 祁門・高森奈津美)

 

ふわふわ飛んでる金魚たち。普通なら癒されそうなキャラですが、初回に攻略なしで適当に進めて、この子たちに由を食べられてしまったので、それ以来ずっと苦手です。人間バージョンもどこを見てるか分からない感じの目で、絶妙に不気味だ…。

 

もみじ(CV:矢島晶子)

 

大食漢のてるてる坊主さん。このキャラにボイス矢島晶子って、いくらなんでも無駄遣いが過ぎるのでは?と思わなくもないけど、出てくるたびに妙な笑いが込み上げてきて、なかなかどうして好きなキャラでした。

けど、ずっと警戒していた「もみじサンに食べられエンド」は存在しなかった。絶対あると思ったのに!

 

*コミカライズ版
 

 

こちら、電子版がちょうどお安くなっていて、一気読みです。すべてのルートから重要なところを抜き出して、オリジナルな展開も入れつつ綺麗にまとめ直してあり、読みやすかったです。

後半あたりは入れなきゃいけない話が多すぎて少しごちゃついてしまった感はありますが、バッドエンドばかりなゲーム版に比べると、かなりハッピーエンドに近い形で、満足です。キャラクターは特に秋良が、ゲーム版のあやかし殲滅!な感じとは違い、共存の道を望みつつ奮闘していてかなりかっこよくなっていました。

サブキャラたちのエピソードはゲームよりも細かく語られていたくらいで、特に由季と朱音の話はその身勝手さがより明確になってしまっていた。由の事は本当に、「由季の身代わりにするために作った」というのが、いやはや…。由季も、夜市と一緒になった朱音を見て、嫉妬と飢えで苦しんでいたのは分かりますが、由は君たちの事情とは全く関係のない別の人間なのにさ。

朱史とミコ様の経緯についても、より分かりやすく描かれていたけど、あやかし側の身勝手さと朱史の不憫さにまた辛くなってしまったよ。

けど、ゲームよりも少し幼い顔立ちに描かれた由くんは可愛くて、この子が笑って終わることができたのは良かったです。

なにげに謎だった「足部さん達」の中の人もちょっと見えてしまった。ひえ!

 

連休中、そういやこのゲームいい加減やろうかな、みたいな感じで軽く始めてみたら思った以上にハマって、コミカライズにまで手を出し、いまだに余韻が続いている。もうしばらくはあの童謡みたいな歌が頭の中で響きそうです。

あ~かやあかしやあやかしの~♪