
何枚かはどこかで観たかもしれないユトリロ。
そんなに興味を惹かれる画家でもなかったのですが、この会場は入りやすいので観てみたら、特に「白の時代」と呼ばれる作品群が美しくて、なかなか充実した時間を過ごせました。
会場内は一部を除きほぼ撮影可です。
ここ10年ほどで撮影に寛容な展覧会が本当に増えました。ありがたい。

ユトリロの画業の最初期、パリ近郊の町モンマニーに暮らしながら近辺を描いていたという「モンマニー時代」の作品。

これはカミーユ・ピサロの影響がみられる「白の時代」直前の作品だそうです。現アーティゾン美術館の石橋正二郎氏のコレクションで、印象派関連の作品として収集されたものらしい。


実物写真と共に展示されているものもいくつかあったので、見比べてみる。横長の建物を左から右へと緩やかに下げ、手前の花壇はこちら側に大きく広がってくるような構図で奥行きを表現しているのが分かる。
<1909 八木ファインアート・コレクション>


ユトリロは1909年頃から6年ほどの間、白を基調とした建物を数多く描き、その期間の作品群は「白の時代」と呼ばれるそうです。
この白い壁なのですが、彼はパリの建物から落ちる漆喰の欠片を拾い集めて絵具に混ぜ混んでいたらしいです。砂や鳥の糞なんかも混ぜて、素材感を表現したとか。いや、漆喰は分かるけど、鳥の糞…?

ユトリロ「白の時代」の作品群で最も目を惹いた一枚。
「聖体拝受」はキリストの血肉を表すパンとワインを食べる儀式で、初めてそれを受ける時には白い衣装を着るらしい。会場説明ではこのタイトルは、ユトリロの母ヴァラドンの聖体拝受の日に夢に出た少女に由来すると書かれてましたが、その夢を見たのは母ではなく、ユトリロで良いんだよね?しかし、画面に少女は描かれておらず、ただ静謐に白く塗られた無人の建物が白い少女を連想させる。


ブルターニュのサン=マルチュー修道院、右の絵葉書を元に描かれたものですが、実際には白くないレンガの壁をまるで漆喰のように真っ白に描いています。


立体的に陰影が付けられた丸い建築物。特徴的な白い壁に淡くピンクや緑を合わせた建物もかわいいですね。

母や友人と共にコルシカ島に半年滞在した後に描かれたもの。これは建物がかなり平面的に表現されている。


この辺りからだんだん白に拘らず、鮮明な色を使う「色彩の時代」が始まります。やっぱり作風的に好きなのは「白の時代」なのですが、これまであまり風景画に人物を入れたがらない感じだったのが、ここからけっこう人物も入れてきて、これはこれで面白いです。
<1920 個人蔵>



<1925 SOMPO美術館>


ウラジェーヌ・アジェという写真家が撮影した写真を元に描かれたもの。「ミミ=パンソン」とは、当時ミュッセという作家が書いた小説に登場する少女らしいですが、このモン=スニ通りがその住居とされて名所になったそうです。オタクの聖地巡礼というやつか。



後期になるほどに色彩が明るく鮮やかになっていきますね。建物をメインに描いていたのが、人物を入れてその町の生活そのものを描くようになっていった感じ。

珍しい、花瓶の静物画です。基本は風景画家でしたが、親しい人には花の絵を描いて贈ったのだそうです。これは妻リュシーに贈ったもの。

